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All it is free

All it is free 005

「レイちゃんって、将来自分でなんかしそうな気がする」

昔設計事務所のアシスタントをしていたころ、
上司の設計士 三上さんにそんなことを言われたことがある。

「ええ~。そんなでしゃばりですか?」
笑って言うと、三上さんは
「なんか目がね、鋭いんだよなあ。」
と笑った。


目が鋭いって。。。。
男じゃないんだから。。。
といいかけてやめた。

なんとなく、そんな気がしたから。


預かった資料を持って、パソコンの席に座ったとき
「自分でなんかするのかなあ」と
ちょっとうれしい気持ちになったのを覚えてる。




そのコトバは予言としてあたり、
それから5年ぐらいで
私はデザイン事務所を構えることになる。



言霊はあるんだと、いまさらながらに思う。






今はこうして、また人の下で働いている。
今が一番静かで、一番心落ち着いてるのかもしれない。



料理にしても、仁くんと一緒にいたときは
私の方が遅いときがあって
彼が食事を作ってくれていた。



今は会社帰りにスーパーにより
じっくりと食材を選ぶことが出来る。


料理ってこんなに心落ち着くんだと
いまさらながら思ったりしている。




帰り支度を始めていると
ケータイのメール着信音が鳴った。



# by higalive | 2010-10-01 21:33

All it is free 004 ギフト?

企画営業室とのはじめての顔合わせと打合せが終わり、
ようやく会社の自分のデスクにつく。




これは一目ぼれってやつだろうなあ。。。。。

ココロの中でぼそりとつぶやく。




と、いうより、なんかあるんだろうなあ。。。と
多少の感がよぎる。



私の感は、結構あたるのだ。







今日の打合せ内容をまとめ、とりあえず議事録をまとめる。
名刺入れの中から、もらった3枚を取り出す。


彼の名刺を、まじまじと眺める。
これも、なんか前にやったことがあるなあ。。。。


矢部 透。
ヤベ トオル。


ココロの中で繰り返す。




少し痛い感情が、心臓あたりに渦巻く。



人は、それをクリアしないと、また同じ問題を神様からプレゼントされるらしい・・・
なんか、そんなコトバを誰かから聞いたような気がした。



これは、ギフトなのか?
問題がちらほらと頭に浮かぶ。




お客様。
妻子もち(たぶん)。
私はわかりやすい。





こうみえても、不倫はやったことがない。




・・・・結婚はまだしなくていい、と思ってる。





そしたらこれはやっぱり、ギフトなのか?









目の前に広がる大きなガラス窓から、秋の真っ青な空が見えた。
そとはもうだいぶ涼しくなっている。


暑さと 気持ちのよい風が交差する。



私の気持ちも、それに少し似ている。



# by higalive | 2010-09-26 21:45

All it is free003 イリオモテ。

All it is free003  イリオモテ。_b0199931_20393751.jpg


ユウのことなんか頭の中になかった、5年前の夏の終わり。

仁くんと別れた月の次、九月。

私はいきなりイリオモテ島に行くことにした。


仁くんは同い年の、彼氏だった人。
気がつけば、私のアパートに居候していて
二年もたっていた。


彼と出会ったとき、彼はディーラーのエンジニアだった。
車もバイクも大好きで
その話をするときの表情が好きだった。


なんだか、私と違う世界を、ちゃんと持ってるみたいで。



昔から、私一本になってしまう人が苦手だった。
私一本になると、逃げてしまう自分がいた。


ほんとは、私が聞きたかったのかもしれない。
「私のどこがいいの?」と。


だから、精一杯向かってくる人を避けてたのかもしれない。
私の空虚なところを見たときに、私一本だった人が
離れていくのが怖かったのかもしれない。


グラフィックデザイナーという仕事は
ある意味、自分自信をそのまま評価される気がする。
けなされるときは、とことんけなされる。

もちあげられるときは、すごく褒められる。



その、どちらも私。

その、どちらも私の分身。




仁くんがなぜかエンジニアからお菓子のパテシェに仕事を変えたときは
びっくりした。



エンジニアを、極めるんじゃ、なかったの?
車が好きだったんじゃ、なかったの?
まあ、人それぞれの生き方があるし。



ただ、がまんできなかったのは
パテシェ修行から帰ってきたあとの愚痴だった。



そこからだんだんと会話がなくなってきた気がする。
今、思えば。



そこで私は、ひとつ気づいたことがあった。
「専門家の私を、彼にだぶらせていた」ことに。





完璧な考えなんかない。



どうして、そう思ったときに、話をきちんとしなかったのかな。
・・・そっぽ、向いてたね。私。





彼が出て行く日。

「レイちゃん、ありがと。今まで。ほんとに」
と、コトバを短く区切りながら言ったことを覚えてる。




そして彼がいなくなった部屋の中で、
車の本にはさんであった私宛の手紙に
「笑い顔が好きでした」という一文を読んで
少しだけ泣いたのを覚えてる。





私、仁くんの前で、そんなに笑ってたかな?
怒ってばっかり、いなかった?・・・・







そんなこんなの夏の終わりと恋の終わりを向かえ、
徹夜で仕事をこなした私は、
沖縄行きの飛行機に飛び乗った。



# by higalive | 2010-09-26 21:00

All it is free002 ユウ。

All it is free002   ユウ。_b0199931_18511927.jpg


ユウは、不思議な、つかみどころのない人だった。

趣味は同じ。

名前をつけてもらった人も同じ。

なんとなく、環境も同じ・・・・



それだけといえば、それだけ。


この4年間の間、私は三人の人と恋をした。

それでもずっと、ユウのことは頭にあった。





5年前。
知り合いのビールの会ではじめてみた印象は、いつもニコニコしている人。

可愛い人だなあと、思った。

一つ下。


自分で会社を持ってる、若い社長。



ただ、なんとなく思ったのは、心の中に、刃を持つ人、だとは
なんとなく感じた。



その刃で、自分を傷つけているような気がしてきたのは
そのずっと、後だ。




最初の印象は、それだけ。


その時は、お互いパートナーがいたから、
あえて気にもしなかったんだと思う。






年があけて、ある会の幹事になってしまった。
人を集めなければならない。。。


その時にユウが浮かんだ。





そんなことを打合せ先で考えていたら
スタッフの子が
「柏崎さんが新年のあいさつにきましたよー」と言って
私に彼の名刺を渡した。




柏崎 悠。





その名刺をまじまじとみた。





物語のドアは、いつも突然に開く。
開けたいと思って開けるのではなく、
目の前で重い扉が突然開き、
後ろで振り向く時間もないくらいの速さで風が舞い、
私はそのドアの向こうに足を踏み入れることになる。



意識なんかなくて、
もう、神様がいたずらしたとはおもえないくらいの・・・・・



ギフト、だったのかもしれない。




あのときは。



# by higalive | 2010-09-26 18:57

All it is free001 空の下。

All it is free001   空の下。_b0199931_1138469.jpg


初めてであったのは、
お城がよく見える会議室だった。




エレベーター下で、今回の企画担当 山下くんと待ち合わせ。
人とのコミュニケーションがとっても上手な彼は、
ここのショップで買ったというネクタイ(笑)をし、
いつものさわやかな顔で
「いっちょ行きますか~」と
笑った。


エレベーターを最上階でおりて広がったのは
なんだかボロイエントランスホール。

まあ、普通ショップの企画室ってこんな感じよねえ・・・と
「総合企画室」とあるガラスドアをくぐった。


案内の女性に会議室へ通された。
目の前に映ったのは、お城。
よく見える!

青空の下、とても鮮やかだ。

会議室の後ろには、小さな三脚が見えて
ここでなんらかの撮影をしていることが感じ取れた。

(内部で販促は作ってるんだろうな)
この予想はもちろん、あとで当たっちゃうんだけど。



少し時間がたって、取締役が入ってこられた。
一通り、話を終え、なぜか山下君と取締役は
初対面のくせにお友達になっていた。



「今後、直接打合せをしてもらう営業部長が今帰ってきたから紹介するよ」

彼が入ってきた。





4年間、ずーっと好きだったユウの面影に少し似るその人。
トオル。



白髪まじりの濃い黒髪と
黒真珠のようなその瞳は
なんだか強いものを最初から感じた。


なんでこの人、こんなに強い光をもってるんだろう?

そして、なんでユウを思い出すんだろう?




ヤバイなあ。。。。。




最初から、感覚はヤバかった。
こういう感覚は、最初にわかる。






今度は、光の速度を自分で感じとれるはやさで。
コントロールは自分でできる範囲で。



そう、いいきかせる。



# by higalive | 2010-09-26 12:01

わたくし的な、個人私小説
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