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All it is free

All it is free 020

深い湖の中を、息が出来なくて、もがいていた。

たぶんそんなとき、ユウを見つけた。

もともと知ってる人だった。


意識した記憶の覚えてるところは、友人デザイナーの記念パーティーだった。


中の喧騒にあきた私は、一人でホールに出ようとドアに向かった。
ドアの横には、友人のスタッフが受付をしていて、遅れてくる来賓に挨拶をしていた。

確か、来賓への引き出物は、タマゴのかわいらしい置物だった。

ドアから出ると、急いできた風の男性と目が合った。
ユウだった。

顔は知っていた。
なんでしってたんだっけ・・・?


かわいい顔した人だなあと、
その時はそれだけだった。


宴会場では、太鼓のイベントが始まっている。

私はイライラしていた。


彼女が、うらやましかった。
それを眺める私はあせっていた。


追いつかなければ、と
その時は感じていた。

忙しい毎日にほんとは疲れていたのに。
先を行く彼女に、嫉妬していた。
くやしかった。


そのココロの裏側を
私が本当に望む世界を
忙しさにあわせて、きづかないふりをしていたのかな?



いや、あの時は、
前しか見てなかった。


それしか、なかった。
あの時。
あの時間。


私は本当に、よくがんばっていたと思う。

今は、自分を褒めてあげられる。



殺人的スケジュールを
よくもまあ、あれだけこなせたもんだと。


あの時、たぶん私はよくできる側の人間だったんだ。





がんばればがんばるほど、
湖の深度は深くなっていく。

息は、だんだんできなくなる。
苦しくなっていく。

目の前には、蒼い世界がひろがっていて
その深さゆえの濃さで、前が見えない。


けれど、息が出来なくても、進まなければならない。


この道は、私が選んだ道だから。






どこでその光に気づいたのか、わからない。

湖のなかでもがく私の前に一筋の光がまっすぐに向かってくる。



それが、ユウだった。



# by higalive | 2010-11-07 19:37

All it is free 019

「私、執着してるのかな?」
ぽつりと須川くんに聞いてみた。

「誰に?」

「昔、すごい好きだった人。」

「もう、会ってないんでしょ?」

「うん。会ってない」

「答えはいっこ。すっぱり、手放すことだよ。あきらめなくていいよ。無理に忘れようとしなくて言い。自分の心をだますと、あとでぶりかえすからさ」


手放す、かあ。


前とちょっと違うと、自分のことを思えるのは、
いろんな人の存在と自分がかかわっているからだろうと思う。


たとえば、今たまにご飯を食べるトオルが妻子持ちだとしても。
たまに好きだと言われることも。


その現実が、すべて。

今が、すべてなんだ。




。。。しっかり、見てみようかな。



今、私がいる世界を。



# by higalive | 2010-10-26 22:04

All it is free 018

「俺、中毒なんだよ。恋愛中毒。」
須川くんはそういうと、ごくり、とビールを飲み干した。


「仕事でいやなこととか、つらいこととかあるじゃない。家に帰って彼女がいたら、受け止めてもらいたいんだよ。俺の全部。」

。。。わかる気がする。

たぶん、男の人も、女の人も同じだよ。

もしも全て、私の全てを受け入れてくれる人がこの世にいたら。
私は何かあれば、その人のもとに最後は帰る。

帰る場所があるから、無理も出来る。


そういえば、昔、そういう居場所があったような気がする。

そんな居場所、私どうやって作ったんだっけ・・・?


「でね、彼女がいやがるんだよ。今日は疲れてる、とかさ。なんかそういうのじゃなくて、・・・言ってる意味わかる?」
須川くんが神妙に聞くので、ちょっと笑った。

「大人だから、わかるよ」
須川くんは、やきとりをパクリと食べて、口をもぐもぐさせながら
「俺は、あんまり俺をすきじゃないかもしれない」
と、ぼそりと言った。

見た目もかっこいいし、仕事もバリバリ、そつなくできる。


でもね、それもよくわかるんだ。

わかるから、仲良しなのかもね。

「自分に足りないものを、探して恋をするのかな?似てる人って、私はあんまり好きにならないの」
「そうだね。似てる人だったら、いやだね。ワガママだし、浪費家だし」

二人で笑いあった。


自分にないものをもってるから、そこにフォーカスした光が
輝きをあぶりだす。

輝きに惹かれて、恋といわれる感情の波がやってくる。



恋をすると、いやおうでもなく、「自分」に向き合う。
いやな自分も好きな自分も、好きな人と過ごす中で
少しずつ見つけ出していく。


その恋が、一生をかける恋にしようと決めるとき、
何がきっかけなんだろう?



# by higalive | 2010-10-25 21:58

All it is free 017

もしも。

もしもまたユウに会えたら。


って考える。


なんとなく、会えそうな気がする。

近い未来に。




その時、私は、私自身と同じくらい、
ユウが好きだと
伝えるんだと思う。



とても飽きっぽい私。
ひどいときは、何時間かで飽きてしまう。



でも飽きないときは。
ずっとずっと好きでいる。



嫌いになることがない。




私はもう、
自分の気持ちに抗うことを
最近しないようになっていた。



# by higalive | 2010-10-24 20:18

All it is free 016

「いらっしゃいませ!」

威勢のいい掛け声で、居酒屋 幸吉の大将が出迎えてくれる。

少し仕事が遅くなって、結局会社の近くまで迎えに来てくれた須川くんの
インサイドでここに着いた。

車の色は、メタリックグレー。
なんだか、須川くんによく似合う色。



とりあえずカウンターにならんで、生ビールを二杯頼む。

真剣にメニューを眺める須川くんの横顔を見ながら
陽に焼けて、精悍な顔つきになったなあ。。。と感じた。


須川くんファンは結構いて、
昔ストーカーになった女の子もいたぐらいだから
今も相変わらず誰かいるんだろう。

彼のことだから、包み込んじゃうんだろうなあ。



「うまっ!がまんしてて良かった」
須川くんは嬉しそう。

「そんなにビール飲みたかったの?」

「うん。彼女いたんだけど、つい最近別れちゃってさ。禁酒してた。罪滅ぼしみたいな感じで。」

「あら、そうなんだ。須川くんの方から、別れたの?」

「うん。俺じゃ、こいつ幸せにできないなあ、と思ってね」


・・・・幸せに出来ないって。
まだ、30歳じゃん、と突っ込みをいれそうになったけど、
須川くんの少し悲しそうな表情が見て取れたので
言うのをやめた。



「俺って、だめだなあ、と思うよ。つくづく」

「どこがだめなの?」


「気がつけば、ひとりぼっちにさせてる。そして、そうなってるときって、俺、もう相手に飽きてる」



飽きるってコトバは、ちょっと痛かった。



# by higalive | 2010-10-24 19:02

わたくし的な、個人私小説
by higalive

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